特定外来生物被害防止法に関する個人意見

  【p1】 【p2】 【p3】
 
そこに描かれている行動様式も「ライギョ」本来のものとは異なる。
  こんな話をしたのは、彼らの身体的特徴を「ヘビみたいで気持ち悪い」 と嫌悪する人が多いという事実、迷信や俗信により真実が見えなくなっている事実を踏まえた上で、まずは「あらぬ疑いを晴らそう」という主旨に 他ならない。

 ここまで読んでいただけたら、カムルチーやタイワンドジョウは「あえて選定する必要はない魚種」であることは、ライギョ釣りをしない人でも理解していただけると思う。日本国内の個体数も少なく、しかも多くの生息域では減少の途にある。その魚種を最悪の場合「我々の税金を使った駆除の対象」にまでなる可能性がある種として、選定する必要が本当にある のだろうか?

 この「特定外来生物被害防止法」にかんしては、環境省宛のパブリック コメントの機会がある。1月15日現在、聞き及んでいるところでは、期間は2月上旬~3月の約1カ月間とされているようだ。環境省のホームページ で随時更新されている。ライギョ釣り愛好者だけではなく、その他の釣りを愛好しておられる方でも、自然観察者でも自然愛好者でもいい。「特定 外来生物被害防止法」の選定内容にかんして「何かヘンだな」「納得いかないな」と思われる方は、パブリックコメントを是非とも寄せていただきたい。それで選定から外れるのかどうかは正直わからない。しかし、事実と異なる内容で、彼らが最悪の場合「我々の税金を使った駆除の対象」と なるのを、何もせずに放っておくことはできない。人間として良心があれば、冤罪を見逃すなんてできないだろう。ちなみにパブリックコメントと 聞けば「難しそうでイヤだな」と思う向きもあるかもしれない。それは文字通り「公衆に求めるコメント」である。公衆である私たちは、この問題について思うところを「自分なりの表現」で発言すればいいのである。内容は短くても簡単でも悪かろうはずがない。ただし、言うまでもないことだが、感情に左右された過激な発言などは控えるべきである。

 ここではあくまでもカムルチーとタイワンドジョウにかんする話をしたが、他の魚種にかんしても疑問はある。現在選定されている魚種はこれら2種以外に、ブルーギル、コクチバス(スモールマウスバス)、ノーザン パイク、チャネルキャットフィッシュ、ヨーロッパオオナマズ。日本生態学会が危険度Aランクに分類したオオクチバスやニジマス、ブラウントラウト、タイリクバラタナゴ、ソウギョなどは含まれていない。オオクチバスやニジマスは多くの人に「利用」され、同時に「産業」にもなっている かららしい。それでは本筋を外れていないか?
  また、選定こそされていないが、「何故あんな小さくてきれいなタイリクバラタナゴが危険度Aランクなの?」といぶかしがる人もいるだろう。それは在来種であるニッポンバラタナゴとの交雑が容易なため、純系喪失 の危険があるからだ。生態系の破壊には「食」以外の問題もあることを、知っておいていただきたい。
  魚以外も例示するとキリがないだろう。あなたが生物や自然に対し「公 平な目」を持つ人であれば、疑問も噴出するだろう。在来種であるクサガメやイシガメを駆逐し(?)そこらの池を占拠しているミシシッピアカミ ミガメは何故選定外なのか?とか。これでは「法律」としての正当性は希薄ではないか?だからまずは「特定外来生物被害防止法」の現在の選定内 容を把握することをお勧めする。

 誤解のないようにさらに申しあげておくと、私は「ライギョだけでも選定から外せたら、それでいい」というスタンスではない。現在の選定内容に見られる、法律としての成立原則への違反にも「問題あり」と言ってる のだ。カムルチーやタイワンドジョウのみならず、現在の選定内容には「明治以降に移入された種で、生態系を著しく破壊するもの、またはその危険があるもの、農作物や漁業に悪影響を及ぼすもの、人体や生命に危険を及ぼすもの」以外が含まれている。いやな言い方をするが「ライギョ」にしか興味のない人は、この機会にもっと視野を広げてほしい。

追記
1月14日、カムルチーとタイワンドジョウにかんする件で、東京で会合 を行なった際に、「特定外来生物被害防止法」の特にオオクチバスにかんして詳しい方から、「明治以降に移入された種で、生態系を著しく破壊す るもの、またはその危険があるもの、農作物や漁業に悪影響を及ぼすもの、人体や生命に危険を及ぼすもの」という選定基準は完全に明文化されたも ので、変更の余地はないものと聞いた。それなら環境省や選定委員の方々は、下記の事実をどのように受け止めるだろう?
  カムルチーかタイワンドジョウかは私は調べきってはいないが、いわゆ る「ライギョの生体」が明治以前に日本へ渡来した記録が残っている。以下は平凡社発行、荒俣宏著の『世界大博物図鑑2魚類』からの引用である。
            
(前略)文化1年(1804)には、生きたライギョが大小とりまぜて十数尾 渡来した。大きいもので長さ1尺、小さいもので数寸、形は頭も尾も同じ大きさで、腹がとくに太いということもない。体がぬるぬるしてギバチ (ギギ)のようだった、とある。
  なお文化年間に、生きたライギョ(カムルチーと思われる)が舶来され た話は、栗本丹洲『皇和魚譜』にも載っている。(後略)
        
 また高木春山の図譜『本草図説』にも、その絵が残っている。私はこの件に平成5年学習研究社発行の『ライギョ大全』でも触れている。その絵は前出の『世界大博物図鑑2魚類』233pで見ることができる。そこではタ イワンドジョウ(Channamaculata)とされているが、いかがなものか。 カムルチーもタイワンドジョウも外見はかなり似ているので、当時はっきり同定されたという保証はない、と思う。また両種をひっくるめて「タイ ワン」もしくは「タイワンドジョウ」と呼ぶ地方も多いことなど、不確定要素もある。ただ、間違いないのは「明治以前に『ライギョ』の生体が日本に入っていた」という証拠が存在するということだ。   ちなみに高木春山とは江戸時代後期の本草学者で、下目黒郷長峰町に住居をかまえ、諸国の動植物を観察し『本草図説』に取り組むも、完成に至らぬまま1852年に亡くなった。『本草図説』は植物と魚類が中心だが、 哺乳類も収められている。この『本草図説』は全195冊が愛知県西尾市立岩瀬文庫に収められている。水産編20巻は孫の高木正年が明治16年の第2回水産博覧会に出品した記録が残っている。
2005,01,15 新家 邦紹

 こうして「特定外来生物被害防止法」の問題を見ていくと、行き着くの は日本人の身勝手さである。ハブとネズミの天敵として沖縄本島、奄美大島に移入されたジャワマングースは増殖し、希少種トゲネズミやアマミノ クロウサギをはじめとする在来の地上性生物を捕食し、減少あるいは絶滅させたという理由で駆除対象になっている。在来種の保護は大切だが、一 番の被害者は「人間によって勝手に運命を左右された」ジャワマングースだということを認識しなければ、また必ず過ちは起きる。琵琶湖のオオクチバスの問題でも「他の生物を抑止力として」という懲りない浅はかな、とても学識者の発想とは思えない考えが出ていたのを、ご存知の方もいる と思う。実施はされなかったようだが。
  一方、ペット問題も見逃しにできないことが多い。ここに発生源を持つものの代表はアライグマだが、ワカケホンセイインコもミシシッピアカミミガメもカミツキガメも外来クワガタも同様。輸入昆虫の寄生ダニ類も重 大な問題である。魚にかんしては「飼いきれなくなったから」「飽きたから」といって肉食性大型熱帯魚を、溜め池などに捨てる行為も耳にする。 ペットや釣り業界に関係する人による、そういう行為もあるようだ。「冬を越せないから大丈夫」なんか言い訳にすらならないし、面白がっているフシさえあるのはさらに問題だ。この消費国家で生活する日本人、完全に麻痺してるのか?一度は愛情をかけた「命」ある生き物すらも消費対象なのか?駆除となれば、その生物も消費対象である。駆除で一儲けという人も、そのための虚偽報告も出てくるだろう。それでいいのか?
  【p1】 【p2】 【p3】