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vol.111

月刊「WHIPLASH」DEC,2015

12月の目標:まじめに働く

この雑記は適当にダラダラ書いているので、前回の原稿を渡した日(だいたい各月23日頃)の翌日から、約1カ月のことが出ています。今回の場合は10月25日から11月24日までです。

約1ケ月ぶりにメッキ釣りに行ってきましたが、これがなかなかキビシかったです。何がキビシイといって、とにかく強風。しかもいたるところで風が巻いている。軽いルアー、細いが風の影響を受けやすいPEライン、おかげで飛ばないわ、コントロールはめちゃくちゃになるわで散々でした。さらに風の影響は思わぬところにも表れました。近くの山の木の葉や枯れ草を吹き飛ばして、漁港や川が浮遊物だらけ。せっかくメッキがチェイスしても、アタックまでにフックがそういった浮遊物を拾ってしまう。そんなわけで、少し風がおさまる日没前まではロクに釣りにならず。夕暮れと同時にあちこちでメッキの水面捕食が見られるようになりましたが、食われている魚も極小なら補食しているメッキも極小。そんな中でなんとか数枚釣って、かかりどころが悪かったのとマシなのを2枚食用に持って帰りました。潮まわりは悪くなかったし、魚はけっこういたので、あの風さえなかったら…という釣行でした。

*当日釣れたお魚たち
メッキ(ギンガメアジの子)、クサフグ

*食わなかったけど追いアリ:チチブ(多分。これはおそらく縄張り争いで攻撃)、カマス、コトヒキ

[当日使用タックル]

  • Rod:月下美人76ML-T(Daiwa) *ガイドとグリップを改造
  • Reel:14 CALDIA 2004H(Daiwa)+PE#0.6 w/Floro 8lb Leader
  • Lures:ソルティDr.ミノー50FS(Daiwa)、クリスタルポッパー55S(Bassday)、テトラワークスTOTO48S(Duo)

何かで「ベテランアングラー」と紹介 されたことがあります。「うえっ、ヤメテほしいわ」。それが正直な感想です。自分はたしかに釣り歴は長いですが、ふと振り返ると釣りを始めたのは「ついこの間」のような気がしています。そのせいか、いつまでたっても初心者気分が抜けません。「常に勉強」なんて殊勝なことを思ってはいませんが、常に水辺に立ったその時の感覚を最優先。それが新鮮な気分を持続できる。まあとにかくベテランなんてとんでもない。それにジジイみたいな言われ方でイヤですやん(笑)。ベテランはイヤだ。プロも名人も達人も鉄人も絶対イヤだ。ただの釣師が一番いい。
常に水辺に立ったその時の感覚を最優先しているので、ライギョ釣りにしても、有名人の方々がおっしゃるようなコムズカシイことは気にしたことすらありません。というか、そんなメンドクサイこと考えて、いちいち人に言ってまわるのかよ…と(笑)。結局のところ本質をついてない話なので、感覚を研いで釣りをしてきた者には一笑に付されるだけですが…。数年前、ワタクシにライギョの呼吸と捕食の関係についての講釈を得意げにタレてくれた人がいましたが、「(視野が)狭いねえ」と思っただけ。その話を爆裂爛漫息子センセーにしたところ、反応は「メンドクセー」の一言。また以前とある取材の時に「もっとスローに動かした方がいいんじゃないですか?」とか「カラーチェンジした方が食ってくるんじゃないですか?」と言われたことがありますが、失礼ながら「メンドクサイことを言う人やなあ」と思っただけ(笑)。
お魚釣りはそんな単純なモノではないのです。水温の上昇、それと気温の相関性、気圧の変化、太陽の位置の変化、風の匂い、水の匂い、水生植物の状況、微生物から魚にいたるまで水中の生き物すべての動静、それらを感覚的に取り入れて、理屈ではなく感覚で瞬間的に分析する。そして次の手を打つ。その「次の手」に彼が言ったものはふさわしいとは感じませんでした。というか、そんな小手先のことで変えられる状況ではない。この時の次の手は魚が食ってくる状況になることを察知し、その瞬間を外さないことでした。そして自分が釣場に立って、しばらく釣りをした後の予言は、ふたつともほぼ寸分違わず適中することになりました。この件にかんしては、なぜかその時の記事では触れられてなかったけどね。時間と太陽の位置と地形と水生植物の状況と水温まで予言したのが、まぐれ当たりというか、「当てずっぽう」と思われたのかな。それとも…? ちなみにカラーチェンジは全くしませんでした。する必要を感じなかったからです。ちなみにアクションのスピードや振幅、水面下への振動の強さは、その場の直感で「てきとー」です。いや「適当」です。状況に適し、それに当てはまっている。この言葉、実はイイ意味もあるのにね。
なにはともあれ、自然を感じる人が本当に少なくなったと思います。釣り人にかんしていうなら、自分の周囲には皆無といっていいでしょう。奥多摩の迷彩頭巾氏と話した時、彼も似たようなことを言ってたなあ。聴覚も嗅覚も視覚もダメだ。いや、測定するとそれぞれはよいのかもしれないが、誰も自然の中で活用できない。きわめて直接的に釣りのターゲットとなる魚以外には、全くと言っていいほど活用されていない。同じようにスポーツはできる能力はあっても、自然の中で自在に動く能力はない。健脚なランナーであっても、木立の隙間を縫って足場の悪い斜面をバランスよく抜けることができるとはかぎらない。相手のパンチはスウェイやダッキングできれいにかわせても、重なりあった枝葉をすいすいっとかわしながら、ガレ場を歩けるとはかぎらない。スポーツとしての射撃の名手が優秀な単独潜行猟のハンターになれるとはかぎらない。これが競技ではなく対自然の難しいというか、おもしろいところです。対人よりも予測しにくいところに、対自然の深さがあると思います。そうやって自然に接近していくと、ホンマに釣りにかんして迂闊なことは言えなくなります。同時にコムズカシイことも言えなくなります。

生涯アマチュア釣師、生涯役職無縁、生涯部下だの弟子だのは一切いらん…ということで、今後ともやっていく所存。

TBR-107にかんしては、正規の内部パーティションを切削したモデルでのテストが終了しました。実際のABSインジェクションモデルは、現行の切削モデルよりも0.4〜0.5gぐらい軽く上がることになりそうなので、そこでまたウェイト配分を再考する必要がありますが、まずはひとつ前に進むことができました。これで放電加工型に移行できます。初めてのミノーなのに、才能がないくせに、機能的に欲張ったりしたので、えらく時間がかかってしまいました。まだ完成までには道程がありますが、急かさずに「納得がいくまでどーぞ」と言ってくれた担当氏に感謝します。それと細かい要求を聞いてくれた工場側の皆さんにも感謝します。おかげで自分が想定していたようなルアーになってきました。自分の想定とユーザーさんの希望がどこまで合致するかは不明ですが、今のところ「買って損した…」と落胆されるレベルでないことだけには、わずかながら自信があります。
止水域でのテストでは、ベイトの全開リトリーブ(使用リール:RYOGA1016H)では暴れずに直線軌道を崩していません。ロッドワークとラインスラックを使ったダートではそこそこの距離を見せます(特にサスペンドタイプ)が、飛びすぎない程度、暴れすぎない程度に抑えてあります。もちろんダートの幅はロッドワークで調整できます。現段階ではフローティングモデルが最もウォブルします。というのは、このモデルには#3リングやST-46#4より重くて強いフック(たとえば#4リングとST-56#4)を装着して使うことを視野に入れているので、ちょっと重く抵抗のあるものを負わされて泳げなくなるようでは困るからです。もちろんその重さによっては浮いていることは不可能になりますので、そのあたりはご容赦ください。例をあげると、自分が海外釣行でよく使う、#4リングとY-S21#2というセッティングならスローシンキングになります。ちなみに#4リングとY-S21#2というセッティングでは、ウォブルもロールも減少しますが、それでも動かないというわけではありません。このあたりは文章で説明しにくいので、いずれ動きだけを撮った動画でも…と担当氏と相談しています。
インジェクションモデルは、年内にシボ加工なしの1stショット。ウロコ模様がついた2ndは、来年のフィッシングショーになんとか展示できるかな…ムリかな…微妙やな…といったところです。

「苦労した」とかいう気はありませんが、TBR-107はなかなかうまくいきませんでした。ひとつがうまくいけば、ある機能が低下するといったことが数度あって、自分がミノーに求める「汎用性」がなかなか表現できませんでした。ウェイトにかんしてはパーティションを何回もいじったので、手書きの計算書は13枚になりました。コンピュータ上でそういうバランス計算ができるシステムを組んでいたら楽でしょうが、手書きで表組を作って、数字を書き込んで計算するほうが自分には向いている気がします。こういうことを「努力」などとはまったく思ってないし、ただ遊びの道具のために遊びで計算し、その遊びを苦しみつつも楽しんでいたわけで、そうなると「苦労」という感覚は出てきません。行き詰まった時はいつも「俺は才能ないなあ…」と苦笑して、それを打開するために、「足りない頭を使って考える」という「遊び」を楽しんでいました。なので、自分にとってこのルアーは過程を楽しんだルアーであるといえます。
なんでこんなことを言うかといえば、「結果こそすべて」「(結果の)数字こそすべて」という、ビジネスであれ、スポーツであれのスマートなエリート志向の現代的な世間の流れに対し、絶対エリートになれないし、そんなものになりたくもない、手を汚したりケガしたりしながら何とかやっていってる人間なりのアンチテーゼみたいなモノかもしれません。ちゃんとした過程を経て行きついたイイ数字も、まるっきり盗用したかのようなモノで出したイイ数字も、同じ数字だという考えは、モノ作りにおいては明らかによくない方向へ向かわせます。自分は「職人さん」ではありませんが、本物の「職人さんの気質」を良しとして、そこにたどり着けないとしても、見習いつつ地道にやっていく所存。だから今後とも開発ペースは上がらないことでしょう。以上、遅作にかんするもっともらしい言い訳でした(笑)。

現在TBR-107のテストに多用しているロッドは、RAW DEALERベイトモデル初のBSV(BiSection=2等分 Versionの略)2ピースです。数年前、釣具店で見知らぬお客さんが店員さんに、「ハンドルオフセット・モデルならまだしも、センターカット2ピースのベイトのバスロッドなんて、あらゆる点でワンピースモデルに劣るので、使いたくもないし認めたくもないね」と話しているのを小耳にはさみ、いつかそういう人たちが「前言撤回!」と言うぐらいの2ピースのベイトのバスロッドを作ってみたいと思い立ちました。2ピースのベイトロッドに取りかかる前にスピニングでR705RRL-S2を企画開発しましたが、あえて継ぎがわかるような角度で曲げないかぎりは、2ピースであることなど意識することはない仕上がりでした。実釣テストでも不安も違和感も感じませんでした。それもこれもブランクメーカーさんのおかげ。そこで2015年、2ピースのベイトロッドに着手したわけです。現在無塗装のテストモデルを使っていますが、自分がこれほどルアーのテストに愛用しているということは、それほど気に入ってるというわけで、もしあの時の釣り人に会って、試してもらったら「前言撤回」をとりつけることができそうなモノになりました。ただし、その人が「イマドキのバスロッド」ではなく「ルアーロッド」を評価できる釣り人であったらの話ですが…(笑)。というわけで、典型的な「イマドキのバスロッド」を望む人には向いてませんが、「バス釣りに使えるルアーロッド」を望む人には「おっ!」と思ってもらえるかも。スペック他の詳細はフィッシングショーの前に公開いたします。他にも2モデル、新しいロッドが出ます。どちらも「バスロッド」というより「ルアーフィッシングロッド」です。「イマドキのバスロッド」が国内国外とも市場に溢れる今、あえて自分がそういうものを作る意味など全く感じてないもんで。

2016年にはロッドとTBR-107以外にも少し新製品が出ます。この調子で2017年、2018年にも着実に新製品を出していきたいです。作りたいモノがあるのに(環境的に)作れないという数年前の状況からは、ずいぶん好転したように思います。
来年以降のバスタックルにかんしては、バス専用というより、やはり汎用性をもたせたモノ作りになると思います。いろいろ企画はありますが、日本国内だけで考えるなら一般性がなかったり、オーバーパワー気味だったりするモノが多く、いわゆる「兼ね合い」というものを再考する必要がありそうです。ライギョ用のモノにかんしては、2016年以降に開発予定がいくつかあります。(*「以降」ということは、その年も含むという意味です) 商売主導にならないように、じっくりやっていきます。とはいえ、人生あまり残ってないので、ちょっと急がないとね。

そこは乾季に4駆でないと入れない道の奥の奥にあるという。そのあたりには深いジャングルがひろがり、先住民の小さな集落があり、そこで捕れた魚は彼らのささやかな生活の糧となっているという。自分は緑に囲まれたブラックウォーターのその水域に一目惚れした。岸にも水面にも緑が溢れている。そして狭い小舟に夫婦で乗り、先端に立って銛を構えた先住民の漁師の姿を美しいと思った。背を伸ばして静かに鎮座した漁師の奥さんの姿に、ふと絵画の中の風景のような錯覚をおぼえた。
情報を提供してくれた人物はいう。「そこに行くにはまだまだRECCIが必要だ。詳細やルートが明らかになり次第、逐次情報を提供しよう。ひとつはっきりしているのは、外部に住む我々がそこにアプローチできるのは、1年のうちわずかな時間だけだということだ。これはちょっとした冒険だと思う。そう思わないか? 俺は知ってる、KUNIさんは冒険に興味があることを…」。
魚が多いのか、大きいのか、何種類の魚がいるのか、まして釣れるのかどうなのか、そんなことはよくわからない。もちろん宿泊施設なんてあるわけなく、よくて先住民の集落の物置小屋、まあ川岸の平坦な場所か、低木や草を切り拓いての野営と考えたほうが妥当だろう。当然のことながら何種類かの危険生物もいる。でも、そこはきっと自分にとって行く価値のある場所だと思う。直感がそう言うのだ。もし行けるならおもしろい旅行になりそうな気がする。
「RECCIの件はそちらに住むキミらに任せる。よろしく頼む。“ちょっとした冒険”なら、行ってみるのも悪くはないね。俺は日本のチビで軟弱な都会人だから、あくまでも“ちょっとした冒険”程度にしといてくれよ」。深夜2時、そう返信してからビールのプルトップを開けた。今抱えている体の故障が治ったら、また近所の山歩きと山走りに行こうと思う。そして獣道を使って山を渡ってみようと思う。そんな場所で実際にナイフやロープを使ってみようと思う。そうしておけば“ちょっとした冒険”に役に立つかもしれない。また小さな目標ができた。自分はいい友人に会えて幸せだと思う。

初めて中国に行ってきました。釣りではなく100%仕事です。これまでとまったく異なる環境下での仕事だったので、不安もありましたが、すごく新鮮でした。超短期滞在だったので、なにもする間はありませんでしたが、最終日の午前中に少しフリーの時間があったので、手ぶらで釣堀を見物にいきました。なにはともあれ、お世話になったみなさんに、お礼を言っておこうと思います。ありがとうございました。多謝。いただいた白酒を飲みつつ…。

フランスのテロにかんする報道には寒気がした。それは「もし自分がそこにいたら」というだけのものではなく、今後の様々な不穏や混乱を予感させるものだ。それを植えつけたということは、テロリストは彼らの使命を果たしたといえる。これだけでは済むまい。いわゆる有志連合もこのまま済ますまい。湿った恐怖と湧いてくる怒りがまとわりつくのを感じる。犠牲者の方々に深く哀悼の意を表します。

最近の!!な試合

★UFC女子バンタム級選手権 ロンダ・ラウジー vs ホーリー・ホルム

中継を見て試合前のオッズに驚いた。ラウジー:1、ホルム:13!? そんな大差?個人的にはラウジー:1ならホルム:1.2ぐらいに思っていたので、ラウジーの異常なまでの高い評価に目を丸くしたのだ。試合が始まり、ホルムの左が当たった直後、ラウジーの表情が変わった。この瞬間、自分は「互角だ」と直感した。そしてラウジーの追いが乱雑になり、ホルムの左や蹴りが入るようになる。ホルム有利を確信したのは、ラウジーがグラウンドで腕取りのセットアップを外された瞬間だ。ラウジーの「何とかしないと」という焦りが、動きと表情に濃厚になる。一方のホルムは腰を引いて落とし気味にして、掌を開いて前に出した構え。隙を狙って的確な左がラウジーの顔面をとらえる。ダッキングで逃げられた瞬間につんのめったり、パンチで足が揃ったりするラウジー。1R終了後のインターバルでも口を開けっ放しだったし、打撃によるダメージだけでなく、スタミナも厳しそうだ。そして目から察するに精神的にも追い込まれた観があった。2Rもホルムは低い構えで狙う。過去の試合でこんな構えしてたっけ?そしてラウジーの攻撃をかわして後ろを向かせ、態勢を立て直しかけた瞬間に、見えない角度から左ハイキック。ラウジーは倒れた瞬間マットで頭を打ち、蹴りのダメージを増幅させてしまった。すかさず降ってくるパウンドをレフェリーが制止して試合終了。絶対王者がその座を追われ、女子バンタム級は荒れておもしろくなりそうな予感。まずはホルムvsミーシャ・テイトを観てみたいね。そしてラウジーさんの捲土重来の復活にも期待。
またこの試合は、その体質において餅vs鉄骨でもあった。乱暴に言うと、餅がその粘着性という良さを活かせず、鉄骨がその硬さを存分に武器にしたということだろう。

★WBC S.フェザー級級選手権 三浦隆司 vs フランシスコ・バルガス

ラスベガスでミゲール・コットvsカネロ・アルバレスの前座として行なわれた試合。1Rいきなり三浦はバルガスの右をもらってグラつく。かろうじてダウンは逃れるが、硬さと気負いが目につく。ラウンドを重ねるごとに回復し、4Rには例の左でバルガスを吹っ飛ばすようなダウンを奪う。8R終盤にもパンチを効かせたが、そのラウンドはバルガスのパンチをけっこうもらっていて、終盤の攻勢でポイントを取りかえした観がある。次の9R、三浦が行くか?と思ったが、果敢に出てきたのはバルガスの方。強い右をもらって三浦がダウン。早く立とうと焦るが足がもつれる。8カウント後、試合は再開されるが、連打を浴びてレフェリー・ストップTKO。負けはしたが、両者ともに勇敢ないい試合だったと思う。こんな試合に「結果がすべて」なんて判断をくだしてほしくないね。王座こそ陥落したが、三浦には内山との再戦を期待したい。しかしその内山には、前フェザー級王者で、あのノニト・ドネアを一撃KOしたニコラス・ウォータースが興味を示しているらしい。

最近の愛読書

★『オオカミ追跡18年』 斐太 猪之介著 実業之日本社

古い本だ。初版は昭和45年。大阪で万博があった年で、まだほんのガキだった自分の記憶では、川や海は排水で汚れ、奇形魚が次々に発見され、PCBという言葉がTVや新聞に現れた。自然は高度経済成長のとばっちりを受け、そしてその数年後にヘドラが現れて破壊行為に走ることになる。この頃オオカミとツチノコがブームになりました。やがて大蛇やヒバゴンも騒がれるようになります。自然が好きで親父の後について毎週末野山や川や海に行っていたガキも、当然のようにこれらUMAに興味を持つようになりました。中でも最も興味を持ったのはオオカミ。これはかつて日本に実在していた動物だし、母方の曾祖母からの伝承で、その遠吠えの様子が語られていたからでもあります。母親が帰郷した際についていって、まさにそのオオカミが遠吠えしていたという場所の、そこに乗っていたという岩まで見ましたが、あまりにありふれた場所と岩だったのでがっかりした憶えがあります。そそり立つ岩山ですごい遠吠えというのを想像していた自分には、棚田の近くの里山の小さな岩はあまりの落差。ガキの自分がひょいと飛び乗れる程度だったもんで…。当時週に1回配本される『世界動物百科』にも、この本の著者である故・斐太 猪之介氏のオオカミにかんする記事があり、『オオカミ追跡18年』の舞台である紀伊山地のみならず、なんと近所の六甲山系にかんする話まであり、わくわくしながら読んだものです。
さてこの本、実は先日、故・伯父の家から引き取ってきたもの。生前山歩きや山草が好きだった伯父は、各地の山に行っては撮影や採取をし、植物の地域変異や地質との関係を調査していましたが、山に入るということで昆虫や動物にも造詣がありました。子供はおらず、甥は数名いましたが、自然に興味があってイキのいいのは自分だけということもあり、けっこう可愛がってもらったものでした。また様々な設計にかかわった技師で、機械から電気まで、印刷機から発電機、某特攻兵器にいたるまで、図面を引いたり計算したりというのを仕事にしていた、多才で、ある意味天才肌の人でした。それでいて不良っぽいところのある人だったので、一族内の異端分子である自分に余計に目をかけてくれたのでしょう。
この本と出会ったのも、もとはというと、伯父が生前「そのうち、これをお前にやる」と言っていた、某特攻兵器にかんする書類を引き取りに行った時のこと。その書類は終戦の夜、正式な書類が焼却処分にされる前に、徹夜で手で書き写したというもの。「このままでは使いモノにならん。操縦しやすいように改良できないものか?」という軍部からの依頼を受けて、気のすすまぬままにあれこれ試案を作成したそうです。ところが、その書類が見当たらない。以前見せてもらっているので、おぼろげながらその兵器の形状は憶えているし、内容も一部憶えているのですが、書棚にも引き出しにも見当たりません。
伯母は「これじゃないの?」と昭和19年のH8翼端木製フロートの強度計算書や輪転の機盤設計図(ともに藁半紙に手書き)を出してきましたが、それはそれで貴重なモノですが、目的のモノではありませんでした。「また折りを見て探しておいてください」と依頼して、上記の書類だけもらって帰ろうとした時に、ふと本棚にあった本に目が止まりました。オオカミ!?斐太 猪之介!? これは見逃せない。「この本ももらって帰ってええかな?」と聞くと、そんな変な本を欲しがる人は、親族にもそれ以外にもアンタの他誰もいないからどうぞと言う。というわけで、持ち帰り読んでみました。
山岳渓流で馴染みのある地名がたくさん出てきて臨場感はあるし、新聞記者だっただけに文章は読みやすく、構成力も優れている。特派員で海外経験もある人なので、大陸系のオオカミとの比較も学術的という以上に実質的。多少の思い込みや思い入れの深さゆえの行き過ぎはあるだろうにせよ、この執念と行動力は驚嘆に値する。わくわくしながら一気に読み終えました。また「枠」にとらわれた学者・権威者への批判も痛快。「このあたりの杣猟師には、犬とオオカミの区別のつかないような馬鹿はいない」というのは傑作。これは野に在らず、ロクに部屋から出ずに情報を収集しているだけの現在の一部の「学者さん」たちにも浴びせてやりたい言葉です。釣りの世界でも同様のことはたくさんありますね。
来年紀伊山地の奥で崖から落ちて死んでるシカやニホンカモシカを目撃したら、ふと「これが50年前なら『狼落とし』である可能性も…」なんて思うんだろうなあ。

最近の珍事件

★高速道路にSAやPAがないと…

中国でのことです。空港に送ってもらう道すがら、小用を足したくなりました。でも高速道路なのにSAもPAもない。で、運転手さんに「トイレに行きたいんだけど」と言うと、すっとスピードを落として車を右の路肩に寄せ、車外を指差しました。男なのでさっさと降りてさっさと立ちションをすませましたが、日本人女性ならこれはけっこう問題やなあと…。
どうでもいいことですが、その時近くの木にとまっていた蝶が気になりました。用を足しながら眺めていたのですが、終わった後に「写真を!」と思った時には、もうそこらにいませんでした。

最近のお買い物

★特になし

今月のダメな人

★特になし